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「なんか、奥さんいる人だった。知らなくてね。今日は、花火で商店街の出店やってんだって。奥さんと2人で。 行っていい?って聞いたら、誰か他の男と一緒なら良いって言われて。ムカついて、宮田に告っちゃった。宮田ならいいかなって。」 「なんか、重い話だね。」 「大人でしょ、ウチ。なめんなよ、宮田。」 「別になめてないけど」 「パピコそろそろいい感じに溶けてんじゃね?」 「うん。」 「ごめんね、宮田。」 「いや、うん。」 店の前のベンチに2人で座った。 「出店、焼きそばなんだって。」 「僕、祭りの焼きそば好きなんだ。」 「まじ?美味いよね。ま、店によるけどな。」 「ねえ。金森、付き合わないけど、一緒に焼きそば買いに行ってもいいよ。」 僕は、少しだけムカついていた。 「え?お店は?」 「あと10分で終わる。」 「まじ?」 「うん。」 金森は、バスで来たって言うから、歩いて会場に向かった。川辺で開かれる花火大会。商店街には出店が並んでいて、焼きそば屋を見つけるのは時間がかかりそうだった。 「さとる!」 声がする方を見ると翔ちゃんがいた。 「さとちゃん、久しぶりー。」 翔ちゃんのお母さんには久しぶりに会った。 「翔ちゃん、松男ジイと留守番じゃないの?」 「あ、お父ちゃんそう言ってた?翔がうるさいから、一緒に連れてきちゃった。え、さとちゃん、彼女連れてるの?やるう。高校生だね!」 「あ、…うん。」 翔ちゃんのお父さんは、翔ちゃんのお母さんの横で、ビールを飲みながら焼きそばを焼いていた。 金森はそれをまっすぐに見ていて、僕は金森の彼氏が誰なのかはっきりわかった。 「フイイィん!さとるー焼きそば毎度あり!」 翔ちゃんが、いつも持ってる零戦で僕を突いた。 「あ、じゃあ、2つください。」 お金を出そうとすると 「持ってけ、さとる。」 翔ちゃんのお父さんが、金森を見ながら言った。 「ありがとうございます。」 2人の間に無言の会話があったように思った。
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