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「今夜はよく晴れて、風も穏やかでしょう。 お出かけの際は虫刺されをして出かけましょう」 翔ちゃんがラジオの真似をしている。松男ジイの孫で、よく松男ジイとウチで買い物をしている。僕は夏休みすることがないって親に決めつけられてレジバイトに入っている。 「愛は地チューを救うぜ!」 レジに置いてある24間テレビの募金箱を指差している。 「まぶらーほじーればー。さらいーのほらーへー。いちゅかかえるーいちかかえーるー。」 …なんの歌だよ。 高いんだろうなって思う零戦のプラモをいつも持っていて 「フイイィいいい!!ボォーオオンゴレビアンコー」 飛行機の滑空を真似てレジの横で見せてくる。 「さとるーかっけーしょー。」 「うん。カッコいいね。」 「さとちゃん仕事中よ。翔ちゃん、邪魔するな。」 「んあっ!邪魔してないもんねっ!!なっ!さとる」 「…へへへ。うん。」 ちょっと、邪魔だと思う。 松男ジイは、お気に入りのお惣菜とカップ酒、そしてオレンジジュースをレジに置く。 「さとちゃん、いくら?」 「惣菜180円、お酒300円、ジュース150円…630円になります。」 「になりまぁあす。」 「さとちゃんは、やりたいことないんか。」 「いんか!?あ?」 松男ジイが、1030円渡してくる。 「……ないよ。」 「3代目宮田商店ブラザーズか。」 「やだよ。」 400円のお釣りを渡しながら答えた。翔ちゃんが僕が松男ジイにお金を返すのをめざとくみている。 「ジィジ、しょうちゃんのアイス。」 「100円のな」 「ぃやはっ!」 幼稚園くらいの子どもが、どうやったって最強だと思う。 「今日の花火は行かんのか。」 「行かない、うちから見えるし。」 「息子が、出店で焼きそばやるみたいでな。翔ちゃん、うちでお留守番だ。」 「ふーん。」 「花火で迷子はかわいそうだからの。行きたいって言ってるけど、小学生になってからだろ」 翔ちゃんが牛の絵の赤いパッケージの練乳アイスを持ってきた。 「さとるー。ピッして。」 バーコードを読み込んで、アイスの代金を松男ジイからもらう。 「さとちゃん、またな。」 「またな、さとるー。フィいいんらんどー。」 翔ちゃんはアイスと零戦、どっちも振り回しながら帰って行った。
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