容疑者の出頭・取り調べ

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容疑者の出頭・取り調べ

「僕が撃ちました」  彼はそれだけを、小さな声で言った。 「川村伊織。……無職、三十九歳。……近隣の一軒家に、一人暮らし、か」  私はそう尋ねる。若干の当惑があったかもしれない。  容疑者は白いシャツに、折り目のついたズボンという姿で、髪は男性にしては少し長め、だが切りそろえてきたかのように整っている。それもそのはずで、出頭前に町の床屋で散髪してきたとのことだった。ほっそりしていて存在感がなく、ともすると大学を出たばかりの青年のようにすら見えたが、髪はかなりの量が白くなっている。 「凶器の散弾銃だが……君は、猟銃の所持許可証は持っていないな」 「……いとこおじのものです。彼の所持品を盗みました」  川村伊織はそんな風に答えるが、その目は虚ろで、私のことはその目に映っていないかのようだった。 「いとこおじ……川村龍彦か。……つまり、被害者の所持品を?」  私は尋ね、彼は無言の頷きで返答する。彼の表情は、私が被害者の名前を口にしたときだけ、苦痛に歪んだように見えた。 「いつ盗んだんだ」 「前日に、保管場所から。あの人はたくさん銃を持っていましたから」  そう答える被疑者、川村伊織。  これが意味するところは何なのか。  つまり、これは計画性の高い犯行であり、高い確率で殺人だということだ。 「何故? ……どうして君は、いとこおじの川村龍彦を撃ったんだ?」  しかし川村伊織は答えない。その後何を聞いても、この容疑者は黙秘を貫くようになってしまったのだった。
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