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「そうやって色々考えてみると面白いですね。
先輩を色で例えるとしたら何色かな。
枠にとらわれないで考えて行動するから新緑のころの緑や黄緑かな。爽やかな感じですね。植物みたいにのびのびしてて、風みたいに自由な感じ」と、彼は優しい表情で楽しそうにそう言った。
私はそんな風なイメージで見えるのか・・・。
「そうかな?私のイメージは緑か~。植物が好きだから緑って言われて嬉しいよ。葉っぱも一枚づつ色や形が違ったり、紅葉して色が変化する所も魅力的だよね。そんな風になれたらいいな」さすがに気恥ずかしい気分になりながらも、緑のイメージは自然と私の心に馴染んだ。
「じゃあ、あなたはなんだろうな~。
ベージュとか茶色とかかな。穏やかでどんな相手も優しく包み込む感じがする。茶色やベージュってベースになる大事な色でしょ。しっかりと栄養を蓄えていて、必要なら人にも分け与えてくれるそんな感じがする」
彼の色のイメージを普段の彼から想像してそんな風に話してみた。
「私が色んな話をしても受け止めてくれるし、意見が違っても否定するんじゃなくて、考えがどう違うのかを考えて説明してくれるし、違いを理解しようとしてくれるから。だから私も遠慮しないで思う存分話せるんだよ」
と普段から彼に対して思っていたことを話した。
「先輩から見ると僕はベージュとか茶色ですか。なるほど」
ふふんと彼は面白そうに笑った。
「確かに自分は強い色ではないかな。相手の色を自分の色に変えるより、他の色と混ざり合う方が好ましいと思う方ですね。
僕が普段こうやって先輩と話すのも、一つの話題を話し合うことで、自分の考えっていう色をはっきりさせたり、先輩と話すことで自分の考えも変化したりする面白さがあるからですよ」と彼はそう言った。
「そうそう、私も同じようなことを思ってたんだ。君と話してると最初は思っていなかった様な考えが見つかることもあったりして、一人で考えてるよりも広がりを感じられて楽しいよ」嬉しくなって私はちょっと興奮しながら彼にそう言った。
すると、彼はこちらをまっすぐ見てこう言った。
「先輩は自分の考えを率直に話してくれるから、話しやすいんです。
一つのことでも深く考えたり、すぐに答えがでそうな事でも思考を惜しまないで考えるでしょ。普通だと、必要以外の事は面倒だからそのまま一般的な定義のまま受け取る人が多いけど、先輩はそうしないから。だから聞いていて面白いんです。相手の考えも良し悪しを決めずにまずは聞いてくれる所も良いなと思うんです」
それから後輩はいつもより少し強い口調でこう言った。
「もっと先輩が持っている色んな色を見せて欲しいです。
先輩が好きな事とか大事な事とか、してみたいことを知りたいんです。
そして僕の持っている色んな色も知ってもらいたいです。
できることなら、これから一緒にたくさん新しい色を作って行けたら嬉しいです」
ん?それってどういうこと??
なんだかいつもと雰囲気が違う様な?
戸惑っている私に彼は、
「つまり先輩とずっと一緒にいたいってことですよ。」
と優しい笑顔を浮かべながら答えた。
やっと私は下手な計算なんかしなくても、一緒にいられる恋人を見つけたのかもしれない。
彼と一緒に次はどんな色を見つけようか。
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