わたし色 あなた色

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続きをどう話そうか考えていると後輩が先に話し出した。 「まあ、相手と仲良くなる為には一定の効果はあるんだろうけど・・・。 それも程度によるんじゃないかな。 相手が自分の好み全部に寄せてきてるって明らかに分かったら、不自然だし怖い気がしますよ」と、少し気持ち悪そうに顔をしかめながら、後輩はそう言った。 私はうんうんと頷きながら、 「相手に良く思われたいとかそういう気持ちはわかるし、相手少しでも近づきたい恋心がなせるわざなんだろうけど、何でもかんでも相手好みを演じるとなると、ちょっと怖いよね。   好みを演じろって言われても、自分ならいくら相手の好みだから言われても、それには到底なれないな~ってこともあるよ。性格とか好きな物とかね」と私は答えた。 私だって、好きな相手の好むような性格とか雰囲気に変化出来たらどんなに楽だろうと思ったことが無いわけじゃないのだ。 色々話しているうちに、だんだんと過去の記憶の封印が解かれてきてしまったのか、ついこんなことを口にしてしまっていた。 「例えば、服装とかでもそうかな。自分の好みじゃないとか。 いわゆる俺の色に染めたい的な感じ? もっとこういうのも似合うよとか、新しい面を見つけてくれて、それをやってみて良かったと思うアドバイスならいいんだけど。   だって相手が嫌いでも自分はずっと昔から好きっていうこともあるじゃない。髪型とか服だって自分の好みとかこだわりはあるよ。 考えとかやり方だって自分のもので変えたくないものもあるでしょ」 自分の過去のことを思い出して、ちょっとふてくされた気分になりながらも、自分の正直な気持ちを話してみた。 「そうですね。自分の好みってあるからな~。 服装に限らず音楽とか他の趣味だって相手が苦手でも好きだってこともあるしなあ。好き嫌いって我慢できないこともあるから難しいですね。 どうしても嫌いだったら自分がいない時にして欲しいって頼むとか。 相手がどうしても好きだったらやめてもらうのも難しそうだし」 好きな物や趣味に夢中になりやすいタイプの後輩は、自分ならどうするだろうかと想像してみたのか、実感のこもった声でそう言った。 「おお~優しいね。相手を気遣う様にはしたほうがいいだろうけど、私も相手がどうしても好きなものをやめてと強制するのは難しいと思う。 相手が好きものは、なるべく尊重してあげたいよ。 例え自分がその良さを理解するのが難しくてもね。相手を大事にするってそういうことじゃないのかなって。まあ健康に害になるような物とかだったら止めた方がいいだろうけどさ」 私はそう返事をしながら、きっとこの子に恋人ができたら、さっき言ってたみたいに優しくするんだろうな~と、心の中でこっそり羨ましく思った。 大抵この手の話をすると、自分の考えが大事か、相手に譲るか、どっちかの答えを出す人が多い気がしていたから、この答えが私には新鮮だったのだ。
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