わたし色 あなた色

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思っていたよりも後輩が真面目に答えてくれたので、わたしが元々疑問に思っていたいわゆるこの問題の本丸の部分についても意見を聞いてみたくなった。 「そもそも思うんだけど、なんで自分色に染めたいとか思うんだろうね。 やっぱりそういうのって相手への征服欲とか支配欲から来てるのかな。 相手を自分の思い通りにするのが心地良いとか」 すると後輩は、右手で自分の鼻から顎まで軽く包み込むように触れながら、 (まるで自分の心の中にある大事なものと交流するのに必要な儀式のように、じっくり考えたり、それを話そうとする時に、いつもこのしぐさをするのだ。) うーんと唸りつつこう言った。 「そう言っちゃうと怖いですけど、確かに、そんな風な危険なレベルで支配的な嗜好を持つタイプもいるかもしれないけど、大抵は独占欲みたいなものじゃないかと思いますよ。 例えば、仲の良い友達が他の友達と自分より親しそうだと少し嫉妬するとか、そういう気持ちも独占欲みたいなものだろうし。 自分を他の友人よりも好きでいて欲しいとか、相手にとって大事な存在で居たいとか、そういう気持ちがあるから嫉妬するわけで。 でも一番でいたいからってなるとなんだろう?競争心もあるのかな? まあ、恋愛でも相手を信じていてもやっぱり多少はしますもんね、嫉妬って。友達関係よりこっちの方がなぜか強くなりがちな気がしますけど」 と後輩は続けた。 なるほど、嫉妬って解釈もできるのか。 嫉妬も人と付き合えば自然と起きる感情だけど、嫉妬も独占欲も強すぎるとやっかいだよなぁ・・・。束縛したがったりとかも。こっちは支配欲なのかな? 「うーん、友人の友人対して嫉妬するのは、自分が少しでも安全に生存する為に必要だからかな?自分を大事に思って優先して欲しいみたいな。 恋愛でその手の感情が強くなるのは、自分の遺伝子を残す為の戦略だからじゃないのかな。自分の子孫を残すのに良い相手を探して、その相手がいつでも誰かに取られないようにと警戒してるんだろうね。本能のせいだよね、きっと。 こんな風にいったら夢がなくなるかな? まあ私の場合は嫉妬は多少は程度するけど、そんなに強くはしないからな。 そもそも恋愛が一番の優先事項ってタイプじゃないから」 「やっぱり先輩はそういうタイプでしたか」 と後輩は面白そうに、そういう性格だって自分はもう分かってますよと言いた気に余裕の笑顔を浮かべてそう言った。 この子がこういう顔をするのって珍しいな。普段穏やかな表情をする方が多いから。 「その手の感情の出どころは生存に対する本能とか遺伝子を残す為だという説ですか。確かにあり得そうですね。 でも損得だけで人と付き合うには、恋愛相手にしても友人にしても割に合わない関係もあったりしますから、自分はもうちょっとロマンを信じてみたい気がします。 自分はあまり嫉妬とかそういうことは意識したことが無いんです。多分考えすぎると相手に迷惑になりそうだし、嫉妬でお互いが嫌な思いするのを避けたいって考えがあるからだと思うんですけど」と、そう続けた。
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