わたし色 あなた色

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「そうやって考えてみると、先輩と僕も一緒に新しい色を生み出してるんじゃないですか?」と後輩が言った。 「ん?そうかな?」そういえば色んな話をするから、自分だけじゃなくて二人で探し出した考えや価値観は結構あるのかも? 後輩はまた口元に手を置いて首を傾げている。何か大事なことを考えてるのかな? 「例えば、最近だったら、そうだな~・・・。 先輩は紅茶が好きですよね。 それで僕は先輩と一緒に食事したりお茶してるうちに紅茶が好きになって、 今は先輩にお勧めのお店とか美味しい銘柄の紅茶を教えてあげられるようになったから」と楽しそうに後輩は言った。 「確かにそれはあるかもね。私は紅茶を飲むのが好きだけどあなたほどマニアックに調べるほうじゃないから、今はあなたの方が紅茶に詳しいよね。 この間休憩室で煎れてくれた紅茶も絶妙な味と薫りで美味しかったわ~」 紅茶が好きな私はいつも彼にその話をしていたから、きっとそれで影響があったんだろうな。 ふと、最近彼のおかげで知った美味しい紅茶のことが浮かんで、顔が緩んでしまう。その美味しい紅茶が無性に飲みたくなってきた。 「でも先輩が紅茶党じゃなかったら、自分は多分こんなに紅茶に詳しくなったり好きにはなってなかったかなと思いますよ。元々紅茶はあまり飲まない方だったから」後輩は楽しそうに笑いながらそう言った。 「そっか。そういうこともあるかもね。 私があなたに紅茶好きになれって強制はしてないけど、流れを考えると君が紅茶マニアになったきっかけは私か。なんかだか面白いね~。」ふふっと声を上げて私は笑ってしまった。 私は誰かを自分好みに変えたいとか思い通りにしたいという欲は殆どないけど、自分が相手に影響を与えたことがあるんだと思うと、ちょっと不思議な感覚になった。支配欲ではないと思うけど。これってどんな感覚なんだろう。 「最初は紅茶好きっていう私の個性からあなたが影響を受けて、興味のあることは詳しくなりたいっていうあなたの個性があってのこの展開か。 お互いの持つ個性が混ざりあって、二人で新しい色を生み出したおかげで私は美味しい紅茶にありつけてるわけか」 面白いな~。私は、じわじわとなんだか嬉しくなってきた。 「君がいてくれてありがたいよ、後輩君」 何だか照れくさくなって、ちょっとふざけながら私は彼にそう言った。
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