わたし色 あなた色

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「恋愛が上手くいく秘訣って何だと思う? 私の友達が言うには演じることだって。 相手の興味のありそうな話題を話すとか、相手の好みの感じの服装をするとかが大事なんだって」 私がそう話すと、後輩はちょっと顔をしかめながら、 「演技が上手だと恋愛上手ってことですか?うーん、それってどうなのかな」と、それだけ言って黙ってしまった。 ありがちな恋愛テクニックの話だから、きっと適当に調子の良い軽い答えが返って来るかなと思ったら、ちゃんと考えてくれているらしい。 いや、もしかすると内心は友人に言われた話がどうも受け入れられず、もやもやしている私の本心を見抜かれてしまっていたりして。 しばらく前に友人から恋愛のアドバイスとして言われたことを、いつも話をする後輩に言ってみる気になったのだ。 アドバイスをしてきた友人はいつも途切れることなく彼氏がいる子で、それに対して私は恋愛をするとか誰かと付き合うとか、そんなことを考えるだけでもかなりの労力を必要とするタイプだった。 そんな私を気遣ってなのか、もっと積極的になりなさいとこんなアドバイスをされたのだった。 「確かに好きな相手に少しでも良く思われたい、好かれたいって気持ちは分かるんだけど・・・」私はそう言いながらもやはり納得がいかない気分だった。 後輩とは普段から仕事の後によく色んな話をする。 どんな話でも落ち着いて聞いてくれて、自分に関係があるなしに関わらず、面倒がらずに意見を言ってくれるのだ。 普段からあれこれ気になる性格の私にとっては、どんなことを話しても下らないとかつまらないと言わずに聞いてくれるので、心地よく話ができる貴重な相手でもある。
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