若き大富豪

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若き大富豪

 広大な敷地にそびえ建つ邸宅(ていたく)の最上階には、景色を一望できる展望寝室がある。  エレベーターが到着しベッドルームへ入ると、女は当然であるかのように強くしがみつき、密着したからだをベットへ向けダイブさせた。重力に身を任せる二人は、重なり合ったままのからだを柔らかな高級ベッドへ深く沈める。  女は、レッスンで鍛えあげられた、その細くしなやかな肢体を妖しくうごめかせ、餌にありつけた飢えた魚のように激しく唇を貪る。それにもなんら抵抗することなく、女の気の済むままにしてやる。メタリックな天井に映る女のからだのラインは、獲物を捕らえた(けもの)のように嬉しげに跳ねていた。  彼女、K嬢は今、国内で最も期待されている一流若手芸能人だ。十代前半から頭角を現し、その類まれなる美貌と愛らしさを武器に、全国の並み居る強敵(ライバル)たちを押し退け、国内最大の美少女コンテストで優勝を果たした。それが、キャリアを昇り始める最初の一歩だった。いわば、芸能界きってのサラブレッドといってよい程の、いい女ということだ。  世の男たちを嫉妬させるほどの、最高な女に激しく愛されているのだから嬉しくない筈はない。が、しかし――
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