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 さて、他に獲物はいないかと街を散策していると、ふと人集りが見えた。  商人は興味本位に顔を覗かせ、そしてギョッとした。  道端に品物が転がっていた。宝石、皿、服、干し肉……それらは、商人が野盗に奪われたものに間違いなかった。ただ、よほど乱暴に持ち歩いたのか、傷や割れが目立った。 「なぁ、あれはなんだい」 「ん? あぁ、それが不思議なこともあるもんだ。さっきまでそこには、何人かの余所者がいた。そいつらは質屋に入ろうとしていたんだが、不意に風が吹いたかと思うと、どこからともなく石やら板切れやらが風に乗って飛んで来てな。そいつにこぞって全身をズタズタに引き裂かれて、おまけに身に付けていたものまで軒並み追いはぎにあったみてぇに攫われちまった。  今は揃って医者の所へ担ぎ込まれている。街の連中は、盗みを働いて報いでも受けたんじゃねぇか、って言っているよ。だもんだから、あそこに転がっているガラクタも、みんな迂闊に手が出せねぇのよ」  商人は嫌な予感がして、その場を離れた。  自分が巡礼者に話した出まかせが、頭の中をよぎる。  相棒のところへ行きたかったが、いくら街の中を歩いても見つからない。そもそも質屋を探していたはずなのに、何故あそこにいないのだ。  胸元がズキリと痛む。  懐を広げてみると、薬を塗り、包帯を巻いた上から、血が滲んでいた。  傷を受けてから四日経っているというのに、包帯の下の血は固まる様子もなければ、傷が塞がる気配も、まるでなかった。
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