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 とある砂漠を、二人の商人がヨタヨタと歩いていた。  馬も連れず、荷物も碌に持っていない。  オアシスを出発してから三日が経った昨夜、野盗に襲われたのだ。  一人が仏頂面で吐き捨てるように呟く。 「おい、あとどのくらいだ」  苦笑いを浮かべながら、もう一人が答えた。 「昨夜星を確認したから、方向は間違っていない。二日も歩けば到着するだろうさ」 「二日か! そりゃあいい、街の連中はさぞ喜ぶだろう。二日後には大きな干し肉が二つ、砂漠から飛んで来るんだからな」 「水で戻してくれることを祈るばかりだな。鼠を齧ったほうがまだマシな味がするだろうし」  脚さえあれば、あと一日で街に着く、という頃合いだった。オアシスで邂逅した他の旅人達に品を売りつけようとしている所を見られたのが運の尽きだった。  仏頂面の商人は悔し紛れに砂を蹴ろうとしたが、そんな体力も残っていなかった。わずかに残っている水を一口含む。乾いた喉にあっという間に染み込み、そしてすぐに喉は渇きを訴えてきた。苛立ち交じりに愚痴を零す。 「あの旅人共と街まで同行すればよかったんだ」 「連中より先に行こうと言ったのはお前だろう。散々品を見ておいて何も手を付けないなんて怪しい、物色してあとで盗むつもりじゃないか、なんて」 「お前こそ賛成していたじゃないか。どいつもこいつも目が信用ならないと」  苦笑を浮かべる商人は言い返そうとして、胸が痛み、止めた。衣服の下では、野盗に切りつけられた一文字型の掠り傷がまだ疼いていた。  気分も状況も美味くない。とはいえ、現状では引き返すことも出来ず、ただ歩くしかない。  相棒の言う通り、干し肉になってしまうのが先か、と思った時。  陽炎の向こうに影が見えた。  蜃気楼かと思ったが、見間違いではなく、それは間違いなく、こちらへ向かってくる人だかりである。 貧相な装いだった。誰もが手に杖を持ち、ゆっくりと、踏み締めるように歩いている。  それは、数人からなる、巡礼者の一団だった。
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