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サクラに半ば引きずられるようにして近くの公園まで移動したけれど、ベンチに腰を下ろしてもまだ、私の足は震えていた。
「大丈夫?」
「うん…ごめん…」
差し出されたペットボトルを受け取るのにも、小刻みに揺れる手では時間がかかった。
ジュースのボトルは自販機から出したばかりで冷たいはずなのに、温度を感じない。ぐっと握り締めたら、ベコッと唸って一瞬凹んだけど、力を抜いたらすぐに戻った。
「アリサ、一命は取り留めたけど意識が戻らないって。今、駅前の病院にいるって警察の人が話してた」
「…そう、なんだ」
私は半端な相槌を打つのが精一杯で、当てもなく視線を足元に彷徨わせた。
サクラはベンチの前に立ったまま、ココアの缶を手の中で転がしている。声は冷静に聞こえるけど、やっぱり落ち着かないようだった。
「いきなり電話してごめん、驚かせたよね。でも…一番に知らせなきゃと思ったんだ。アリサがいつも一緒にいたの、マキだったから」
サクラとも高校に入ってから2年間、ずっと同じクラスだけど、私はほとんど話したことがない。
演劇部でも一緒のアリサなら、多少交流があるのかもしれないけど。
私は濡れた両手を制服のスカートで拭ってから、ペットボトルのキャップを開けた。
手のひらを濡らしていた正体が、ボトルの結露なのか汗なのかは、もうわからなかった。
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