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私は身支度をして、中華レストランへと行った。
座席数こそ少なめだが、そこそこ混んでいた。
1人で来ているは私くらいしかいないが、そんな事が気にならない位美味しい。
私は食事を終えて、部屋まで戻ると扉の前で声を掛けられた。
「深井様、もしよければお目元にどうぞ。」
「えっ?」
見るとトレーに置かれたタオルを差し出してきた。
驚きつつも、私は受け取った。
「では失礼します。」
静かな足音で去って行く制服姿のホテルマンを見送ると、部屋に入りタオルを手に取ると程よく冷えている。
なぜ、冷えたタオル?
鏡を見てすぐに理解した。
恐らく私の目元が赤くなっているのに気がついて、持ってきてくれたのだろう。
恥ずかしい。
どんなに着飾ったところで、惨めな私は変わらない。
現実は契約社員でしかない私は、大した能力のない平凡な人間は黙って現状維持するしかないのかもしれない。
そんな私を彼らは知っているのかもしれない。
普段は着ない淡い色のワンピースが、急に色褪せて安っぽい物に見えてきた。
お嬢様はこんな安いワンピースなんて着ないし、もっと髪も綺麗に整えているはず。
見かけさえも演じる事が出来ない。
この先の私の人生なんて…。
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