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 漢字。  正しければ、それは“甘野老”という綴りだった。  見たことのない組み合わせ。  この植物の名前だろうか。  先ほど受け取った、手中の鮮やかな緑と優美な葉脈をつぶさに眺める。  悩んだ挙句、彼女に倣って葉の端をかじってみる。奥歯がジャリと音を立て、独特の味が舌に広がる。  てっきり菜の花のような苦味を予想していたけれど、これは――。  矢庭に、彼女が腕を伸ばしてきた。  人差し指と薬指をくっつけてその他の指を畳むと、先ほど石を叩いたときと同じように、どういうわけか、今度はこちらの喉をトンと軽く叩く。
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