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 ポロリと言葉が転がり出る。  聞き慣れぬ声に驚き、さらにそれが自分の声であるということに気づき、危うく飲み込んだばかりの草の欠片まで転がり出るほど仰天した。  胸へ湧いた言葉が口元まで上がってきたのは、あまりに久々のことである。  これまできつく喉に詰まっていた栓が外れたようだった。  喉元から二本の指が離れる。  彼女が前かがみだった体勢を戻す。  ――魔法?  脳味噌が死んだふりをしている。  このとき、随分と情けない顔をしていたに違いない。  はじめ、正面の白い顔はこちらの困惑など意に介さず、相も変わらず色のない瞳でこちらを見守っているだけと思っていた。  けれども、気のせいだろうか。  注意して見なければ気がつくこともできないほど微かに、柔らかく、閉じた薄い唇の輪郭がたしかに下弦の月の弧を描いた。
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