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 そんな思いが脳をかすめたのは、漢文の授業で先生が中国の昔話を扱ったからだ。  普通、白い髭を生やした姿として想像されることの多い仙人は、中国の伝説においては、もと人間であった神を指して使われる。  老翁でなく、若い女性の姿で描かれることもあるそうだ。  長年の修行を経て居を仙境へと移し、仙術を操ることで俗世の安寧を保つ存在。  仙術と聞いても、いまいちピンとこなかっただろう。  今までなら。  教科書の隅っこのコラムには、『食事はあまり取らず、”甘野老(アマドコロ)”という薬草を少し食べるだけの者もあった』とある。  それから、『天を駆け、水上を歩き、分身や変身の術も心得ていた』と。  なるほど、彼女なら、そんなことも出来そうだ。  あとで教えてくれたり、なんて。
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