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何か言われると思い待っていたが、相手は何も言葉を発さなかった。
その代わり、一度立ち上がって数歩移動し、傍にあった石の上に再度腰を下ろす。その斜め横にも、丁度同じ大きさの石が突き出ている。
なんとなく誘われたような気がして、半分向かい合うような形でそこへ腰かける。苔で覆われた石の表面は存外に柔らかかった。
女の手中には、ひと房の植物が握られていた。
頑丈そうな茎に幾枚もの楕円の葉がついており、それぞれのつけ根から、白い壺型の小ぶりな花が鈴のようにぶら下がっている。
何年も通った道であるのに、ついぞ見たことのない植物である。
こちらがまじまじと植物を眺めている間にも、彼女は泉のような瞳でじっと見返してくるばかりだった。
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