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 彼女は、楕円形の葉を、茎から次々切り離していった。  一枚、二枚――。  やがて花だけを残しすべての葉を除き終えると、その中でも殊更に形のよい一枚を選び出し、目の前へ差し出してきた。  拒む理由もないので、素直に受け取る。  葉から離れたばかりの指先で、彼女はまた新たに別の葉を一枚つまみ上げた。そうして、微塵の躊躇いもなくその端を口に含んだ。  シャリシャリと音を立て、やがて音もなく飲み込む。そうして次の一枚を拾い上げ、また牧草をはむヒツジのように、葉をかじる。その繰り返し。  当面は、その珍奇な“食事”が済むのをただ待つよりほかなかった。  呆然とするこちらに構う素振りも見せず、ゆっくりと時間をかけて全ての葉を平らげてしまってから、彼女はトン、と自分が座っている石の表面を指先で軽く叩き、続けてそこへいくつか見えない文字を綴ってみせた。
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