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とにかくどういう訳か平民の娘として生まれ変わった私は、パン屋の娘、《モナ》として全く新しい人生を歩んでいた。
前世とは驚くほど違う境遇。
あの頃とは全然違う容姿。
もちろん髪はプラチナブロンドではないし、色も真逆の地味な黒髪という有様で。
それはまるでかつての彼———。
しかも王妃の時みたいに良質なシャンプーで洗えるわけじゃないから、髪はいつも乾燥して、ブラッシングしてもボサボサしてる。
なぜか瞳はブラックグリーン。
本当に。一体どうして?
それに前世はちょっと垂れ目だったが、今は逆に吊り目で何だか凛々しい。
ちょっと背が高い。それは嬉しいんだけど。
幸いなことに病気もケガもなく健康で、12歳まで平民の学校に通い、のびのびと成長した。
貴族じゃないからそれ以上に進学の道はない。
この時点でだいたい親の仕事を手伝ったり、自分に合った仕事を探して働くようになる。
だから私は今、優しい両親の経営するパン屋で働いている。
そして何と!毎日当たり前のようにそのパンを焼いているのだ。
前世で大好きだったパン。それを自分でこだわって焼いたり食べたりできる最高の仕事。
何という幸せなんだろう?
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