274人が本棚に入れています
本棚に追加
程よい広さの木製の陳列棚に、焼きたてのパンが所狭しと並べられている。
それをルイが唸りながら隈なく物色する。
着ている服はブルーのワンピースに白のフリルつき。
ルイは近所のフルーツ店の娘だ。お針子の仕事をしている。
ちなみに私が着ているこの、色違いのクリーム色のワンピースにお店の白くてファンシーなエプロンは、ルイにお願いして作って貰ったものだ。
とにかく可愛いて一番のお気に入り。
平民の格好は大体似たようなものだけど、親友が裁縫が得意で本当によかった。
「今日のおすすめはどれ?」
と、ルイが真剣にパンを物色している。
「んーそうね、今日はコレかな。
シナモンパンと胡桃ロール。あ、この苺パンは久しぶりの新作よ。
ルイの実家で手に入れた苺をジャムにして生地に練り込んだの。」
「うわ、おいしそう〜…!!!うーん、選べない!!!はっきり言って全部買い占めたい!」
「ふふ、もう、ルイってば。
また朝から食べ過ぎだっておばさんに怒られちゃうわよ?」
「確かに…くうぅ、あー!もう!お母さんってどうしてあんなに口煩いんだろう!
ちょっとくらい娘がぽっちゃりしたって別にいいじゃない!ねえ?」
確かにルイの母親は豪快で、ちょっと厳しい人だ。
怒られるところを思い出したのか、ルイは悔しそうに地団駄を踏む。
毎回の事なんだけど、その様子が可笑しくて私はクスクスと笑った。
そうしてるうちに朝早いにも関わらず近所の常連達が、パンの匂いに釣られてぞろぞろと店に集まってきた。
最初のコメントを投稿しよう!