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ここは西部のルシワンダ公爵領。
しかし以前は、今のルシワンダ公爵ではなく、セアリアス公爵という人物が治めていた。
当時は観光地として賑わい、豊作を喜ぶ感謝祭などが有名だった。
だがセアリアス公爵もまた、あの革命の夜に粛清された人物の一人。
当時王室に固い忠誠を誓う重臣だった。
彼なき今、領地にあの頃の面影はどこにもない。
それに現在のルシワンダ公爵、つまり領主はあまり評判が良くない。
天候不良で農作物の不作続きに、物価の高騰。
そして災害で森の大半を失った。
伴う税金の引き上げ。
皆似たように生活は苦しい。
なのにルシワンダ公爵は何の対策もせず、自分達だけは贅沢三昧に過ごしているという。
また公爵に仕える騎士団が領民達に横暴を働いているのも事実だ。
それでも領地の人々は明るく元気だった。
前世では知らなかった世界。
今だに、私とアレクサンドルが悪い事をしたと信じて恨んでいる人々もいる。
「あんな王は死んでよかった」
「飢えた平民を無視して贅沢なパンを食べていた王妃には本当に腹が立つ!」
確かにあの時は彼らの暮らしぶりを知らなかった。
自分で確かめようとも思わなかった。
大臣から受けた報告が全て真実だと思っていたから。
私のことはともかく、アレクサンドルまでが誤解されているのが辛い時もある。
確かに寡黙ではあったけれど、アレクサンドルは人々を苦しめて平気でいられるような人じゃなかったから———
とにかく何で私が前世の記憶を持ったまま生まれ変わる事ができたのかは、分からない。
だけど前世で知る事のできなかった人々の気持ちを知るため、神にチャンスを与えられたのではないだろうか。
最近では気楽に、そう思えるようになってきた。
領民達の暮らし。生き方、感じ方。
貧しくても懸命に生きる人々。
親子の愛。友達の絆。人間関係の在り方。
あの時は見えなかったもの。
「モナ、ルイ〜おはよ!」
パン選びに苦戦するルイの背後からひょっこり現れた人物。テディーだ。
トレードマークはメガネにグレーの癖毛。
サスペンダー付きのズボンが似合ってる。
案外可愛い顔をしてるのだが、性別は男だ。
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