274人が本棚に入れています
本棚に追加
このテディーもまた、私とルイの幼馴染だ。
私達は領民の間ではなぜか《ルシワンダの名物トリオ》と言われていた。
「あら、テディー、まさか今帰り?」
「うん、そう。ふああ〜。眠っ。昨日遅くまで記事作ってだから…」
振り返ってルイが聞く。
「まだ見習いなのに?」
「そうだけど…!今回の記事の出来栄え次第では正式採用されるかも知れないんだ!」
「あのR社……別名って確か《レボルシオン/revolución》でしょ?…大丈夫なの?」
極端に声のトーンを落とす。
目の下にクマを作ってるテディーが心配で、私はこっそり尋ねた。
今しがた彼がいた会社は表向きは健全な新聞社だ。
だが実態は違う。
なんとこのR社、別名=《レボルシオン》は、近々この領地に革命を起こすかもしれないと噂されている会社なのだ。
領地民なら結構知っている。
しかしその不確かな噂に確信が持てたのは、この幼馴染のテディーがそこで働くようになってから。
本当は口外を固く禁止されてるらしいのだが、私とルイを信用して、情報を時々こっそり教えてくれるのだ。
……まあ、記者としては失格なんだけれど。
テディーによると、R社には夜な夜な領民達がこっそり集まり、公爵を領主の座から退かせるための秘密の活動をしているという。
その中心人物となっているリーダーを、革命家の《M》といった。
これもまた領民には有名な話だ。だが《M》やR社の活動のことをルシワンダ公爵に告げ口する人はいない。
なぜなら誰もが横暴なルシワンダ公爵の領主退任を望んでいるから。
「なあ。もしもモナがその…《革命》に興味があるなら、今度の会議に一緒に参加しないか?」
「え…?」
「だってほ、ほら…!モナって時々さ、凄いこと考えるだろ?
お前ってなんか不思議な知恵があるし、物凄く頼りになる時がある…!だから」
なぜかテディーは必死に私を誘った。
「はあ、やれやれ。テディー?
あんたねえ、誘うならもっと別の場所にしなさいよ?そんなだから……」
「わー!バカ、ルイ!余計なこと言うな!」
何かを言いかけたルイに、テディーが言葉を遮るようにのしかかる。
いつもの風景。平和だ。私はそれを見て、お腹を抱えて笑う。
「あはは。貴方達って相変わらず仲良しよね。
もしかして……ルイとテディーって私に内緒でこっそり付き合ってるの?
もしそうなら教えてよ?祝福するから。」
「「え。」」
見事にハモる二人。本当に息ピッタリだ。
確かにR社に興味がないわけじゃない。
今のルシワンダ公爵には私も思うところはある。
でも……前世で革命によって落とした命。
あれを今度はやる側となると、やはり気が滅入るのだ。
正直言って、もうあんな思いはごめんだわ。
今世ではこのまま静かに、幸せに過ごしていたいの。
最初のコメントを投稿しよう!