277人が本棚に入れています
本棚に追加
episode2-2.意外な人物との再会
***
パシャパシャと雨水が跳ねる。
濃いネイビーのレインコートは既にずぶ濡れだ。
あれから急いで養蜂場に向かい、無事に拘りの蜂蜜を買うことはできた。が、外に出た瞬間どしゃ降りの雨に見舞われてしまった。
とにかく傘とコートを準備してて正解。
ゴロゴロと嫌な音が鳴った後、眩しい閃光が走った。
「キャアアアアアッ!」
直後に轟音が響く。思わず耳を押さえていると、強い雨が降ってきて辺りを濁らせた。
もう一度稲妻が走って、次の瞬間には轟音が鳴る。同時に鮮やかに、周囲の景色が映った。
「……あれ?」
さっき雷が落ちた木のすぐ側に、誰かいる。
一人は雨に濡れそぼった後ろ姿の貴婦人。
もう一人は、泥濘に填まった馬車の車輪を引き上げようとしている男性だった。
こんなにひどい雨だし、見て見ぬ振りはできない。私は咄嗟に二人の元に駆け寄った。
「あの、大丈夫ですか?」
「……あ。それが、車輪が言う事をきかなくて。」
振り返る男性と、落雷の中で目が合った。
白みがかった長髪。
湖のように青く、透明感のある色の瞳。肌は美しいアルビノ。
白を基調とした、上品で珍しいレインコートを着ていた。
本当に男?と思うくらいとても綺麗な人だった。
でも見惚れてる場合ではない。
今世の人生では生活の知恵をとりわけ何でも学んでいる。
生きるために役に立つものばかり。
「私も協力しますよ。とにかく頑丈な木の板のような物があればいいので……
この近くに確か、木を加工している材木場があるはず……!一緒に来て頂けますか?」
「はい。勿論です。」
その男は前髪から雫を垂らしながら、ニコリと微笑した。
その様子をそばで見守っていた貴婦人。
雨でよく見えないが濡れていたので傘を差し出し、手に握らせた。
「良ければ使って下さい。」
「……でも、あなたが濡れてしまうわ。」
低く落ち着いた女性の声。が、それと同時にどこか聞き覚えがあるような気もした。
「気にしないで下さい。私はレインコートがあるので大丈夫です。」
早めに何とかできればいいが。
雰囲気で分かる。
お年を召しているだろうに、こんなに雨に濡れてしまっては体に堪えるだろう。
最初のコメントを投稿しよう!