episode2-2.意外な人物との再会

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 木板を見つけて戻ってきた私達は、泥濘にはまった車輪を協力して引く。  今の私は前世とは違い、普段親の手伝いや力仕事をする事もあり、充分に力がある。  大きめで平たく頑丈な木板で、車体を浮かせて車輪の下に準備し、梃子の原理を使うように進めた。  ある程度動いた所で男性が馬に乗り、漸く馬車は泥濘から脱した。    「ありがとう。助かったわ。それに傘は本当にいいの?  あなた……お名前は?」  「傘は差し上げます、私はレインコートを着ていますから。  それに、これくらいはどうって事ありませんからお気になさらないで下さい…!  とにかく雨が酷いので、もう馬車に乗った方が良いですよ。では私はこれで……」  もう一度大きな落雷があった。  閃光によって目の前の貴婦人の姿が顕になる。  美しい緑がかった黒髪。  雨にさえ濡れてなければきっと上品な風貌だろう。  「———!!」  心臓が強く鼓動を鳴らした。  え……?この方……まさか……  ………王太后様………?  そこに佇み微笑していたのは、前世の夫であるアレクサンドルの母親で、王太后だった。  あの頃より歳を召され、ずいぶん雰囲気が変わってしまっていた。  だけどそれよりも。    「どうかされましたか?お嬢さん。」  低い声で彼女は心配そうに私に呼びかける。  前世とは全く違う姿の私に気づくはずはないだろうが、そもそも……  目が見えてないの……?    彼女は探るように私の方へと手を伸ばした。  …左目の付け根から右目の付け根まで、まるで切られたような傷跡がある。  その何よりの証拠に、鼻筋の上、横に一筋の傷痕が通っていた。  昔美しかった目は一直線に閉じたまま、開こうとはしなかった。    噂ではあの《金星の革命夜》に処刑されたと言われていたのに。  まさか、ご存命だったの……?  彼によく似た…………
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