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モナが去ったあの大木の下では———
渡された傘を大粒の雨が滑り落ちていく。
モナの背中が見えなくなっても、オリアナとマテウスはその場に佇んでいた。
また閃光が走り、落雷する。
オリアナの両目と鼻筋を一直線に通る、古い傷跡が顕になった。
「あれが例の子……なのね?」
「はい。王太后様。」
「そう。………分かったわ。マテウス。
《例の計画》を早急に進めましょう。」
「はい————仰せのままに。」
美麗なシルエットのマテウスが礼をし、微笑する。
本当に透き通るような肌や瞳が恐ろしく酷く美しい。
一方の光のある場所にできる影。
彼とは対照的な今のオリアナにはその表現が相応しいようだった。
*
雨はまだ止まない。
曇天はさらに広がっていく…………………
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