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ナツオの選択
蒼ノ下雷太郎
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ナツオがいたんだ。
なつお。
相川夏夫(あいかわなつお)という男は私の幼馴染みである。
夏夫という印象的な名前もそうだが、奴の行動はそれより派手で目立つ。言ってしまえば自由だ。スクールカーストは思春期の子供にはすごくめんどくさいがんじがらめのものだけど、あいつは全く気にしない。美少女アニメの雑誌を教室で堂々と広げて読んだり、かと思えばサッカー部員にこの前の試合どうだったと話しかけ、体育の授業では運動部顔負けの身体能力を披露する。女子とも会話が多く、誰とも気軽に接する彼の評判は高く、中にはどうして自分とだけ仲良くしてくれないんだと勘違いする者が男子や女子からも発生するが、そういうタイプも他のグループに紹介したり、問題を解決するなどの功績を残す。教師としても授業態度は真面目だし、生徒間の問題も彼が勝手に解決してくれて、ただ自分らがこれまで体験したことのない生徒だから苦手としている人が中にはいるけれど、そんなん含めても全体的な評判は悪くはなかった。
ここまで述べてなんだけど、ほんとに人間離れしている。漫画か何かの主人公じゃないかとも――いや、これは現実だけどさ。
「夏夫、お前人間じゃないのか?」
「いや。人間だぞ。ちょっと、不思議な能力あるだけで」
あいつが、化け物じみた力を持ってるのは不思議じゃなかった。多分、みんなもそれを知って(あ、だろうね)と思ったに違いない。花が良い香りをするのは当然ぐらいのノリだ。それで話は済めば良かったんだけど、それで終わらないのが人間なんだろ。
相川夏夫は超能力者らしい。いや、もしくは妖怪? 神様かもしれない。ともかく、不思議な能力を持っているらしいんだ。正直、私にはどうでもいいけどさ。
だって、あいつは夏夫じゃん。
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