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「ご馳走様でした! 今まで、本当にお世話になりました」
深々と頭を下げた私に、店長は何度も首を横に振った。
「世話になったのは俺の方だよ。ユナちゃん、またおいでね。お客としてもだけど、出戻りもいつでも歓迎だし」
「もうっ、縁起の悪いこと言わないでくださいね」
後片付けをするために残るという店長を置いて、それぞれに帰路につく。
徒歩のカナコさんは私をギュッと抱きしめて「今度お茶、行こうね! 連絡してね」と千鳥足で帰っていく。
「ユナさん、私たちともご飯行きましょうね」
自転車で帰るサラちゃんに手を振って、ミナミちゃんとは駅まで一緒。
違う路線に乗る彼女とハグして別れた後で、今、来た道を引き返す。
忘れ物を届けに、行くのだ。
窓から店の中を覗いたら、片づけを終えた店長がボンヤリとテーブル席に座って、ワイングラスを持っていた。
疲れた顔をしているのは、うるさかった私たちの相手をし、一人で料理の切り盛りをしてくれたからだろう。
コンコンと、窓を叩いてみたら、不意打ちに驚きビクッと身をすくめた後で、私の姿を確認して笑ってくれた。
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