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「店長、突然ですみません」
顔をこわばらせながら、手渡した封筒に、昨夜ボールペンで書いた文字は『退職願』。
その文字を確認した店長は、しばらく固まり、驚いたように私を見つめた。
「ユナちゃん、理由、聞いてもいいかな?」
「あ、あの、実は少し前から正社員で働きたいと考えておりまして、それで」
店長が「そっか」と小さく呟いて、眉を落として寂しそうに笑った。
「いつまで?」
「逆に、いつまでがいいですか? 私の勝手なので、店長が決めて下さっていいです」
「そりゃ、ずっといて欲しいのが本音だけど……。でも、ユナちゃんが決めていいよ」
突き放された気がして、心がグラリと沈みかける。
私に決めさせてくれるのは、店長の気遣いだろう、とわかっていて、寂しいなんて思うのはおこがましいことだ。
自分で決めたことじゃないか、と心を奮い立たせるように拳をギュッと握りしめた。
「では、来月の給料日まで、いいでしょうか?」
「六月二十五日? まだ一月半くらいあるけれど、それでいいの?」
「いいです、だって、ホラまだ就職活動中ですし」
「なら、就職決まらなかったら、そのまま働いてなよ」
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