75人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「ねえ、ユナちゃん。本当にこんなんでいいの?」
「こんなんとか、言わないで下さい。私にとっては一番のご馳走なんですから!」
私の送別会の希望は、お店を貸し切って店長のフルコースでもてなして欲しい、というもの。
締め切った店内では、お子さんをご主人に預けてきたカナコさんが、グイグイとグラスワインを飲み干して、私の顔を見ては。
「やだやだ、ユナちゃんと明日から働けなくなるなんて嫌だ」
と、子供のように駄々をこねている。
「私だって、嫌です! 全部ユナさんに頼ってきたのに、これからは店長に頼らなきゃいけない」
「え? ミナミちゃん、そんな風に思ってたの? もしかして、俺って頼りない?」
「ですね、ユナさんに比べたら」
サラちゃんにトドメを刺された店長は、ガックリと肩を落としていて、その姿に皆が笑う。
明日からは昼に一人、夜に一人新しいバイトさんが入る。
残念だけれど、私はその方たちと、会うことがないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!