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一度輪郭がはっきり見えたからか。
悪魔の姿は常に見えるようになった。
日々見ていると、ずいぶん人間臭い。
しょっちゅう伊織たちの会話にツッコミを入れたりして伊織に話しかけてるが、伊織は当然人前では完全無視だ。
ある意味、すごい演技力かも…。
ついつい気になってチラチラと見てしまう。
だって、カッコいい…
ポッと頬を染めると、目ざとく朋子がからかってくる。
「あー!ほらほら、やっぱり恋が芽生えてる!」
「はっ?な…っ…そっ…そんなわけっ」
しどろもどろになりながらますます赤くなる私に、朋子は顔を寄せる。
「一つ屋根の下!義理のきょうだい同士の恋!
ふとした瞬間に出会う2人!
はあ~いいなあ~」
「はっ!?違うし」
「私には隠さなくていいっていいって。上手くいくといいね」
私は真っ赤な顔で、悪魔を盗み見る。
悪魔は視線に気づいて、ひらひらと手を振っている。
朋子に気づかれないように小さく手を振り返した。
ーーあー…なんかすごいのを好きになってしまった…かな。
「伊織、次の授業準備頼むわ」
「はい、大丈夫です!」
伊織はニコニコ、また安請け合いをしている。
「でた!大丈夫マン!」
教室で何人かの生徒がそうつぶやいている。
あの悪魔が守ってくれてるならーー伊織は本当に大丈夫マンだな。
くすりと笑う私の視線は、伊織の背中の黒い悪魔に注がれていた。
【終わり】
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