伊織の秘密

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『俺と伊織は因縁の仲だ。よろしくな』 ーー……っ 悪魔(?)は一方的に話し始める。 『あいつの母親が死んだ時からずっとーー 伊織が死ぬまで傍を離れられない』 ーー……は? バン!とドアが開いてーー伊織が入って来る。 「おい!お前なんでここにいる!?」 見たこともないほどの、伊織の真剣な表情。 『お前のきょうだいに挨拶だ。 元々、俺のことが見えてたしな』 「…っ」 伊織は驚いた様子で私を見つめた。 「…」 いつの間にか動けるようになっていたことに気づいた私は、ベッドに座り小さく頷いた。 「うん…前から…」 「あちゃー…そうか」 伊織は小さく息を吐くと、諦めたように床にあぐらをかいて座った。 「…4歳の時にね」 「…うん」 「俺は死ぬ運命だった」 「…え」 伊織は寂しそうに微笑んだ。 「事故でね。 でも母さんが…身代わりになってくれた」 「……」 何も言えずに口をつぐむ私。 悪魔がつまらなそうに伊織を睨む。 『俺は悪魔だが…さおりの守護者だった。 瀕死のさおりが頼んだんだ。 伊織が天寿を全うするまで守ってくれと』 「…」 『本当は死ぬのは伊織だった。 さおりが自分の力を使って身代わりになったから、守れなかった』 「…」 『伊織が死ねば俺はさおりの元に行ける…でもな 伊織は危険な目に合っても、必ず助かる』 「…まさか…あなたが伊織を危険な目にーー」 ゾッとして、私は眉を寄せ悪魔を睨んだ。 悪魔は首を振る。 『さおりとの約束は果たすさ。 だがは常に伊織を欲しがっている』 「…え」 死って…死神みたいな…? 「…全然大丈夫じゃないじゃない…」 「大丈夫だよ」 伊織はへらへらと笑っている。 悪魔が手を横に伸ばすと、そこに禍々しい大剣が現れる。 『心配するな。この俺が守っている。伊織は死なせん』 「…」 ほんの少しだけ、ホッとする。 そっか。この悪魔は伊織を守っていたんだ。 「だからってなー。派手なんだよ」 伊織が嫌そうに悪魔を睨んだ。 「他のヤツを巻き込むようなことをするな」 『ハイハイ』 言い合いながらも、悪魔と伊織の関係は深く見えてーー 態度とは裏腹に、信頼し合っているような2人に、私の頬はわずかに緩んだ。
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