同期に感謝を

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「あ、みんなごめん、美咲が酔ってるみたいだから先に帰るわ。じゃあな。」 と広瀬くんがみんなのほうを向き、大きな声をかけた。 広瀬くんは私の左手をつかんだまま、元居た場所まで戻る。 自分のカバンと私のカバンを手に取る。 そのまま振り向きもせず、そのまま駅へ向かって歩き出す。 何この状況は… この状況を打破しようと声をかける。 「広瀬くん」 「…」 「広瀬くんってば」 「なに?」 「えっと、えっとさ、あのさ、なんで手を引っ張るの?」 「べつに」 「いやだからなんで引っ張るの?私そんなに酔ってない。一人で大丈夫だよ。歩けるよ。」 振り払おうとするも、広瀬くんの大きな手にがっちりつかまれて離せない。 こんなに大きい手なんだ、やっぱり背が大きい人は手も大きいんだなとか関係ないことを漠然と考えてみる。だから私は手が小さいのかと。 公園を抜けた先には信号があった。 そこでいったん立ち止まる。 掴まれていた手首が解放された、と思ったらそのまま下に滑り手をつながれる。 わけわかんないんだけど。 わけわかんないんだけど。 なんで手をつないでいるの。 しかも指と指を絡めるやつ、いわゆる恋人つなぎだ。 「なんで?」 「…あの場にいたくないだろうと思ったから」 前を向いたまま広瀬くんが小さい声で答えた。 なんか暖かい。大きくて暖かい。この声、なんかいい。 私の『なんで』は、手をつないでいるわけを聞きたかったんだけど。 私をあの場から逃がしてくれたんだ、泣き出しそうな私から。どこかに落ちていきそうな私から。 「えっと、知っていたの?」 「知っていた。課長のことも、美咲のことも知ってた。だから課長のところに行かせたくなかった。あの場にいさせたくなかった。ごめん、止めることができなくて。」 なんて言えばいいのか。 誠さんとのこと、誰にも言っていなかったのに、広瀬くんは何で知っていたんだろう。 広瀬くんに感謝した。 信号が青になり、そのまま私の手はつながれたまま前に進む。
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