さよならには涙を

1/8
前へ
/150ページ
次へ

さよならには涙を

そのまま広瀬くんと二人で手をつないだまま地下鉄の駅へ向かう。 何を話したらいいのかわからず、二人黙ったまま。 けど手はつないでいる。広瀬くんの大きな手からは逃げることができない。 スゴカ(交通系ICカード)を出すときに一瞬離れたけど、すぐにつながれた。 地下鉄、その後JR鹿児島本線と乗り継いだ私たちは、BBQ会場を出てから約40分後私の最寄り駅に着いた。 「家まで送る。家はどこ?」 振り向いた広瀬くんにそう言われ、またぐっとつないだ手に力を入れられる。熱い。 私は空いているほうの手で駅の南口を指さし 「この商店街を抜けて…」 駅から私の住むアパートまで歩いて約5分。 駅を出て昔ながらの少し寂れた商店街を抜け、昔ながらのスーパーの手前を左に曲がったらすぐだ。 何か言わなきゃ 「この白と茶色の壁のアパート、ここの301号室。角部屋。日当たりがいい。スーパーが近いのがセールスポイント。」 入社すぐからこの3階建ての比較的新しいアパートの3階の1DKに住んでいる。 日当たりもよくスーパーが目の前にあるところが気に入ってここに決めた。 スーパーの横を通りながら、 誠さんはいつもこのスーパーに車を停めていたな。 ふとそんなことを思い出した。
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加