332人が本棚に入れています
本棚に追加
お気に入りの緑のソファを彼に勧める。
一人暮らしを始めるときに何軒もインテリアショップや家具屋をめぐり、出会ったものだ。
彼の分のコーヒーと自分の分のココアを小さなお盆にのせ、テーブルに置く。
ソファは2人用だが、二人で座るには少し狭いなと隣には座らず、ソファに背中をあずけるように床に座った。
座って落ち着くと、何を話しかけたらいいのか急にわからなくなる。
「大丈夫?」
広瀬くんが私のはるか上から首を傾けて顔を覗き込むように尋ねてきた。
目が優しいな。彼の瞳の色がこんなにきれいなこげ茶色だったことは初めて知った。
「うん、大丈夫。」
「話す?」
「うん。私、聞きたいことがある」
「なに?」
「何で広瀬くんは課長とのこと、知っていたの?」
「…年末の社内の忘年会の時の課長と美咲の様子を見て気が付いた。」
さすが、営業でトップ3の営業成績を出している営業マンだ。
人を見る目があるということなのか。勘が鋭いのか。
「そっか。ずっと黙っていてくれたんだね。
ありがとう。そんなにわかりやすかった?涼にもばれてないのに。
あ、今日は本当にありがとうね。ほんと助かった。」
「あの場にいることは無理だと思ったから無理やり連れて帰った。ごめん」
「ううん、ありがとう。あのままいたらどうしたかわからないし。泣いたかなぁ。あの場で責めるとかできないしなぁ。それにしてもまさか結婚していたなんてね~私馬鹿だな。笑っちゃうよね。笑っていいよ。」
自虐的にはははっと笑うと、真剣な目で広瀬くんが私の顔をじっと見る。
最初のコメントを投稿しよう!