89人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
直 樹
僕は裕樹が好きだった、
いや、それは現在進行形で。
いつからか…いつなんだろう、
それは自分でも判らない。
けれど、少年が少女を追うのと
何一つ変わらぬ感じで
僕は、いつからか
裕樹の影を追っていた。
ただし……
他人には悟られないように。
良識的な親の庇護のもと、
恵まれた環境で暮らし、
学生生活を送る中、
虎は虎、ウサギはウサギと
睦み合うのが常識とする世間と
渡り合えるような強さを
持ってはいないのだから
僕は“僕”を隠さねばならない。
そして、一番知られては
ならないのが裕樹本人、
裕樹は僕を“親友”としか
見てはくれない……。
知られたら、隣で裕樹を
感じることも出来なくなるのだ。
愛を乞えない者の傲慢であると
重々承知であるけれど…
天衣無縫に生きる裕樹が、
安定した家庭を持たぬことに
どれだけ救われていたか…。
それは優子も同様で
優子には子供の頃から
鈴子しか…なかった。
![e03c198d-4dff-4016-91ec-ec10d66244bd](https://img.estar.jp/public/user_upload/e03c198d-4dff-4016-91ec-ec10d66244bd.jpg?width=800&format=jpg)
最初のコメントを投稿しよう!