直  樹

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直  樹

 僕は裕樹が好きだった、  いや、それは現在進行形で。  いつからか…いつなんだろう、  それは自分でも判らない。  けれど、少年が少女を追うのと  何一つ変わらぬ感じで  僕は、いつからか  裕樹の影を追っていた。 e03c198d-4dff-4016-91ec-ec10d66244bd  ただし……       他人には悟られないように。  良識的な親の庇護のもと、  恵まれた環境で暮らし、  学生生活を送る中、  虎は虎、ウサギはウサギと  睦み合うのが常識とする世間と  渡り合えるような強さを  持ってはいないのだから  僕は“僕”を隠さねばならない。  そして、一番知られては  ならないのが裕樹本人、  裕樹は僕を“親友”としか  見てはくれない……。  知られたら、隣で裕樹を  感じることも出来なくなるのだ。  愛を乞えない者の傲慢であると  重々承知であるけれど…  天衣無縫に生きる裕樹が、  安定した家庭を持たぬことに  どれだけ救われていたか…。  それは優子も同様で  優子には子供の頃から  鈴子しか…なかった。            
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