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菜々子の出産祝賀会から
二週間が経った。
秋雨が冷えを招いた正午前、
「裁判所から直帰がニ名と
長沼、お前、午後は?」
先輩弁護士に聞かれた直樹は
「内場製菓の専務と
打ち合わせのあとは
戻って明日の裁判の
準備をします」
掲示板に自分の予定を書いた。
「ええと…岩瀬は?」
「家裁からもう戻る頃なので
駅前で待ち合わせを
してるんですよ、昼飯」
そう言って上着を手にした。
「おいおい、もういい加減
結婚を決めたらどうだい?
親御さん達もお待ちかねだろ?」
先輩の声に他の所員も
笑いながら頷いているが
「まだまだお互い
仕事が半人前ですよ」
いつも通りの回答をして
直樹は扉を閉めた。
“同病相憐れむ”
直樹と優子は、いつからか
“公認の仲”を演じていた。
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