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一瞬で足を躱した優子、 まるで後ろが見えているように。 不格好に転びかけた中年男性に 「山田さん、気をつけなきゃ」 振り返って優子が 不敵な笑みを。 苦笑を堪えきれない周囲と直樹。 “山田さん”はバツが悪いので 店を変えて行ってしまった。 「よく気づいたな、山田に」 「ついて来てたもの、フフ」 また不敵に笑う。  “山田”は検察庁の人間で 裁判では随分、優子に コテンパンにやられている男だ。 この界隈では “氷結美女”などと噂される 敏腕弁護士の優子。 女性や子供の被害者への 思慮深い行動には 検察庁の人間すら一目置く。 当然それは、妬みやヤッカミも 買ってしまうのだが、 そんな無礼は微塵も 優子を傷つけることなし。   ただし…… “氷結”と言われる今の強さは、 子供の頃の優子には 一欠片もなく、泣き虫の 虚弱な少女であったけれど。
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