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「直樹に少し…相談が…」
注文のロックウイスキーが
運ばれるまで
太一は少し間を置いた。
それから
「僕らの大学の先輩でね、
ずっと病理で研究されてる
“藤川教授”という人に
会ってたんだ、さっきまで」
ポツリと話してまた止める。
「仕事の話かい?」
「いや…菜々子の…
菜々子の子供のこと」
カランとグラスの中で
氷が落ちるのを
太一は眺めたまま。
「子供・透真の父親について
なにか知ってるかと…」
「なんでその藤川さんが?」
「『菜々子さんの子供は
僕の子供では?』
……と、おっしゃるんだ」
「な…何を……?!」
質問の唐突さより
藤川の残忍に直樹は驚いた。
太一は子供の頃から
ずっと菜々子を想ってきたから。
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