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「藤川先輩は僕らの4年上で、
学生の頃からよく面倒を
みてもらってたんだ、
僕も菜々子も。たぶん…
菜々子はその頃から
先輩を好きだったと…」
泣き出しそうな横顔が
直樹には痛々しい。
「先輩にはもうその頃から
恋人がいて、卒業すると
すぐに婿養子に入られた、
医薬品会社の一人娘だから。
順風満帆な暮らしだったけど
十年ほど前かな…奥さんは
病気になられてね、
寝たり起きたりみたいだ…。
むろん生活に困るような
ことはないし、先輩は変わらず
学問に専心出来たから
早くも教授だしね。
ただ、お子さんもいない
暮らしの中で…先輩も
寂しかったんじゃ…」
「菜々子とは…その…
長く付き合いを?」
「いや……」
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