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「“一度だけ”らしい」
「 ?! 」
「でも……」
太一の言わんとするところは
直樹にも充分に解った。
菜々子は浮気な質ではない。
おそらくその菜々子の
想うところの藤川も
同じように真面目な質だろう。
だから、
『子供が生まれた』
と、噂に聞いて
勘定してみたら思い当たる、
その節を確かめずにはおれぬ
人物であると、推察出来る。
「で、その藤川さんは
お前にどうしろ?と?」
「確かめて貰えないかと、
もしそうなら…責任を
とりたいらしい…」
「なんて…」
『なんて残忍な男だ』と
言いかけて直樹は止めた。
その残忍に苦渋の太一に
追い打つ必要はない。
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