8/13
前へ
/84ページ
次へ
「いやあ、まいった、  冷や汗かいて手こずった」 そんな口調で裕樹が 帰京したのはすぐだった。 あっさりと帰ってきたことで、 直樹はなんだか霧が晴れて (ああ…心配しすぎか…) 子供みたいに胸がはしゃいだ。 いつも通りに 直樹のマンションで 二人で夕食、晩酌。 「ここはやっぱり快適だわ、  栃木は寒くて…かと言って  俺の安アパートも寒いしハハハ」 直樹が社会人になってすぐ 直樹の両親は、故郷の長野で 気楽な田舎暮らしに。 広いマンションでの 一人暮らしとなった直樹宅が 皆の溜まり場となり、 特に裕樹は、  「飯くわせろ〜」 と、有り金が底をつくと やってきては泊まってゆく。 直樹にとって… それだけで…ただ裕樹の 笑い声や寝息を感じるだけで… 恋の疼きは癒やされていた。 この夜も、裕樹が料理を担当、 直樹がワインを開け… と、席についた、そのとき 裕樹のスマホが鳴った。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

86人が本棚に入れています
本棚に追加