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「こんばんは、少し、いい?」 マンションのエントランス画面に 優子が映った。 ロック解除してから暫く ドアが開いて 「ダメね、“独り者”は。  仕事がないと年末年始休みは  手持ち無沙汰になって」 食材をテーブルに置いた。 「まだでしょ?夕食」 「君は?どうしたの?」 「家にいても、フフなんだか  手持ち無沙汰だし…」 エプロンを付けた優子が 鶏鍋の用意を始めて… (そうか…) 例年二日はここで みんなで集まって新年会を していたことを思い出した。 「…鈴子は…結婚の話で  ずっとお父様の実家に  帰ってるみたいだわ…」 さも料理の支度に 気をとられているように ぶっきらぼうな口調の優子は、 まるで自分のシルエットのようで 直樹は情けない気分になった。 だから余計…
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