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3.はじめの一歩
その後もレイの配信は続いていた。
コメントが読まれたことが嬉しくてまた打とうと思うもののなかなか会話に合うようなものを打てない。
考えているうちに次の話題に移り、打っては消し打っては消し、なかなか「送信」を押せなかった。
「じゃあ次はみんなの質問に答えるよー!前に聞いた質問でも答えるからいっぱいコメントしてね!」
"ここだ!"
私は彼女に聞きたいことがあった。
急いで打ち終わるとすぐに「送信」をタップする。
そして配信画面に私のコメントが流れる。
「どうしてVライバーになろうと思ったんですか?」
答えてくれるかわからなかったが、私はレイの人となりが気になっていた。彼女は「妖狐の世界からやってきて人間の友達を増やしたい」という名目はあったが、アーカイブなどを見ていると雑談などで普段は学校に通う普通の学生だということがわかった。
「私と同じなんだ…」
そんな私と同じ普通の女子高生がなぜ、Vライバーになったのか気になったのである。
すると…
「Vライバーになったか?かぁ。人間世界の友達を増やそうと思ったからだよー」
レイの答えは私の望む答えではなかった。
「まぁ、そう答えるよね。コメント読まれただけでも良しかな!」
私はコメント欄に「答えてくれてありがとうございます。」と打ち、送信しようとした時だった。
「それとね…」
まだ続きがあったのだ。
「それとね、私は今までごくごく普通に妖狐の世界で暮らしてたの、でも自分が生きていたっていう何かを残したくなって、それでこういう世界があることを知って挑戦したいなって思ったからかな。今ではたくさん友達もできたしね!」
それは私が聞きたかった言葉だった。
「私にもできますか?」
気がついたら先程のコメントを消して送信していた。
「きっとできるよ。一歩踏み出すだけで世界は変わるよ。応援してる!」
私の中で何かが少し動いた気がした。
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