chapter6 クロスロード

16/28
前へ
/271ページ
次へ
彼の頭をそっと抱え その下にアイスノンを差し込んだ   「う・・・ん・・・・ 」 まだ眠っている彼がつぶやき布団をどけようとした 優樹菜は優しくなだめた 「熱いのはわかりますがダメですよ・・・・ 汗をかくのは良い事ですが脱水防止に 沢山飲んでください」 愛しくてたまらない人が弱っているのを 見て心が痛んだが母性本能も大いにくすぐられた パジャマを着替えるのを手伝い 汗まみれの背中を拭いてあげた 彼は朦朧とした意識の中優樹菜のされるがままだった 着替えて寒さにふるえる彼の肩まで布団をかけてあげた 「ハイお薬ですよ あーん・・・・    」 「・・・・自分で出来るよ・・・」 「だめです!私のいう事を聞いてください」 大人しく優樹菜のいう事を聞いて葉山は優樹菜に 薬を飲ませてもらい 重たそうにしている頭を枕に静め 再び彼は眠りについた 散らかったベッドサイドテーブルをかたずけ 彼に目を向ける 青ざめた肌の上でまつ毛が黒い扇子のように見える 弱ってても彼はハンサムだ 再び身を乗り出してぐっすり眠っている 彼の頬にそっと手を当て熱を計る 頬にあてた親指に規則正しい脈が感じ取れた さっきよりも柔らかな吐息に指先を撫でられた よかった・・・・ お薬が効いてきたのね・・・   ホッと優樹菜は安堵した これならば明日にでも熱は下がるだろう 再び愛しい彼は自分のものになる喜びが体中を駆け巡る 優樹菜は自分も仕事帰りなのに疲れも筋肉の痛みも忘れた このままこうして ずっと彼を見つめていたい・・・・ すると突然彼が寝返りを打って 布団を蹴飛ばして一言つぶやいた 「京子・・・・・」 優樹菜はみぞおちを殴られた気持ちになった
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6235人が本棚に入れています
本棚に追加