chapter6 クロスロード

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「ねぇ・・・そんなにひどい?」 患者が情けなく大きなため息をつく この若者はまだお酒臭く 左腕全体にタトゥーが入っている 次郎がX線画面から目を離した 「今から4階の整形外科に移ってもらって そこで処置をしてもらう そして入院の手続きが必要だな 」   「あーあ・・・・ とんだ災難だよ・・・  」 患者がぐるりと目を回してうめく 「これに懲りたらもう酔っ払ってベランダから 飛び降りない事ね 」 加奈子も笑って若者に叱咤する 「たまには入院も良いものよお酒も抜けるし」 優樹菜も笑いながらレントゲン写真を蛍光ボード からはがし大きな封筒の中に入れ 患者が座る車いすの背のポケットに入れた 「誰かに連絡をとらないと 誰に電話する? ガールフレンドとかお父さんお母さんとか」 優樹菜がポケットからメモを取り出して言う まだ半分酔っらっているラッパーは顔をしかめた 「飛び降りたのを彼女も見てたから 今こっちに向かっていると思うよ 彼女にだけ電話してよ お袋なんかに連絡したら こっぴどく怒られるに決まっているさ 」 優樹菜はクスクス笑った 「わかったわ・・彼女ね 整形外科の処置を受けたら医師の先生達から きちんと説明をうけてね 」    「あーあ・・・・ 今週ユニバに一緒に行く予定だったんだよ 彼女きっとすごく怒っているよ  うちの彼女怒ったらめちゃめちゃ怖いんだよ」  「それじゃ 反対の脚も折られないようにしないとね」
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