chapter6 クロスロード

11/28
6291人が本棚に入れています
本棚に追加
/271ページ
優樹菜はクスクス笑って救命室から出て行った 鼻の下が伸びた患者が次郎に言った   「ねぇ・・・先生・・・ あの子めちゃくちゃかわいいな 今の彼女と別れてあの子と付き合おうかな・・・ っていて!!いててててっ!  」 ラッパーが叫んだ 「いってぇよ!先生!もっと優しく診察してよ!」 「骨折してるんだから痛いのは当たり前だろう!」 次郎はしかめっ面で怒りが湧き上がってくるのを 抑えラッパーの踵を触診した 他の男が優樹菜に興味を示したからといって 怒る権利など自分にはない 彼女は自分にとって恋人でもなんでもないのだから しかしこのめまいさえおこるこの怒りは どうしようもなかった 一時間後 次郎の胸糞悪い怒りはどんどん酷くなっていった   ついさっき気付いたかすかな頭痛が今は 頭蓋骨を割らんばかりの激痛へと変化した 頭痛は全身の骨を伝い つま先まで届いているかのようだ それでも次郎は痛みを無視し 目の前の仕事に集中しようとした 昼近くまで辛抱強く仕事を続けていると 木崎が葉山の肩を持って呼び止めた 「肩を叩くな!」 次郎はしかめっ面で木崎を見た 「叩いてませんけど・・・・先生?・・・ 顔色が悪いですけど・・・大丈夫ですか?」 次郎は顔を上げた 相手の話が良く理解できなかった その時ガクリと膝から力が抜けた 慌てて木崎が次郎を支えた 「葉山先生!」
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!