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優樹菜はクスクス笑って救命室から出て行った
鼻の下が伸びた患者が次郎に言った
「ねぇ・・・先生・・・
あの子めちゃくちゃかわいいな
今の彼女と別れてあの子と付き合おうかな・・・
っていて!!いててててっ! 」
ラッパーが叫んだ
「いってぇよ!先生!もっと優しく診察してよ!」
「骨折してるんだから痛いのは当たり前だろう!」
次郎はしかめっ面で怒りが湧き上がってくるのを
抑えラッパーの踵を触診した
他の男が優樹菜に興味を示したからといって
怒る権利など自分にはない
彼女は自分にとって恋人でもなんでもないのだから
しかしこのめまいさえおこるこの怒りは
どうしようもなかった
一時間後
次郎の胸糞悪い怒りはどんどん酷くなっていった
ついさっき気付いたかすかな頭痛が今は
頭蓋骨を割らんばかりの激痛へと変化した
頭痛は全身の骨を伝い
つま先まで届いているかのようだ
それでも次郎は痛みを無視し
目の前の仕事に集中しようとした
昼近くまで辛抱強く仕事を続けていると
木崎が葉山の肩を持って呼び止めた
「肩を叩くな!」
次郎はしかめっ面で木崎を見た
「叩いてませんけど・・・・先生?・・・
顔色が悪いですけど・・・大丈夫ですか?」
次郎は顔を上げた
相手の話が良く理解できなかった
その時ガクリと膝から力が抜けた
慌てて木崎が次郎を支えた
「葉山先生!」
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