サイドA

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そんな風に呑気にしていられたのも、抗がん剤が終わるまで。九月下旬になると、いよいよ手術のはなしになってきた。 化学療法医にお別れを告げて、消化器外科の先生と話す。 私はなにをするのにも、ひとより時間がかかってしまう。私のもっているもうひとつの病のせいだけど、仕方ない。 入院の支度をしようにも、頼りになりそうな手伝い人もいない。だいたい私が入院中に必要になるものなど、ほかのひとにわかりようもないのだ。 ひとりで支度をする覚悟で、余裕をみて、十月の三週目に手術の日にちを決めた。 のんびり三週間待てるわけではない。その間に、手術や麻酔の障害になるような不具合がないか、ひととおり検査を受けなければならない。 特に自覚症状もないし、すんなりいけると思ったのだが……再検査になった。しかも二か所も。心臓と、甲状腺。 それぞれ別日程で病院に通わなくてはならない。検査と、結果と。 ああ、どんどん時間がなくなる。いやなんだよなあ、しっかり準備したいのになあ。焦るの一番嫌いなのに。 と、そんなときに、あの綺麗なひとが死んだのだ。
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