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私とユキトの出会いは......。
正直、覚えていない。
なんて言うと、冷酷に聞こえるが仕方がない。
親の証言が確かならば、物心つく前からの知り合いらしい。
ということで、私の人生の記憶にユキトあり。
ユキトなしの人生なんて考えられない。
と、断言するほどにはユキトとの思い出は豊富にある。
だけど......。
幼い頃から勝ち気な性格のくせに、どこそこスペックが低めの私は黒歴史を量産してばかり。
今なお学年トップの成績をキープし続けているユキトとは正反対の人生を歩み続けている。
そんな状況を俯瞰し、気付けた瞬間。私の淡い気持ちは封印された。
そもそも勝ち気で低スペックな子とハイスペックな幼なじみが釣り合う世界なんて、漫画の中だけだ。
確かに幼なじみとして近くにいるから、たくさんの思い出を共有できた。
だけど、幼なじみとして近くにいたから、自分のマイナスポイントも惜しみなく晒し過ぎていた......。
(そもそもメリットを全てデメリットにしちゃったら、流石に救いようがないよね……)
そんなこんなで元来の勝ち気な性格も相まって、私はユキトに辛辣な態度を取り続けている。……にも関わらず、ユキトはそんな私を受け止めてくれている。
とはいえ、どんなに好意的に解釈しても男友達の延長線の対応だ。
だけど、それでもいい。
手のうちも、腹の中も......私の全てを知り尽くすユキト。
そんなユキトが、女の子として私を好きになるなんてあり得ないのだから。
だから、一番近い友人でいるだけで、満足と思っていた。
……はずだった。
はずだったんだ......。
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