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昼休み、ユイの爆弾発言を聞いたことは覚えている。
だけど、その後の記憶がさっぱり抜け落ちてて......。
家を通り越して、尚ふらふらと歩いている自分にようやく気付く。
「……何やってるんだろう、私」
ユイの告白に動揺したのは事実だ。
実際、クラス中いや学校中の誰よりもユキトはカッコいい。
どんなに部活が忙しくても学業を疎かにすることだってない。
メガネのせいで冷たく見られることもあるけれど、面倒見も抜群。
一度、約束したことは絶対に守る義理堅さだってある。
それがユキトの惚れた弱みで見える良さなのか。ユキトの真実の姿でもあるのか。本当のことは、分からない。
だけど、ダメダメな私でさえユキトの愛され要素が即座にポンポン浮かぶのだ。そんなハイスペック男子にも関わらず、女子から一切好意を持たれない方が異常と言えるだろう。
だから、変な話だけど......。
ユキトが好意を向けられること自体は、当然のことと思えていた。
むしろ、ユイの観察眼に脱帽していた。
そして、その好意を惜しげもなく第三者に述べることができる素直さが羨ましかった。
(私がユイの立場だったら、素直になれてたかなあ……)
もしもの仮説を考えても無意味なことだ。
それでもやっぱり考えてしまう。
そして、絶望する。
どんなに考えても、現在と同じ失態を犯す気がしてならない。
素直さは、簡単に手に入れることは出来ない美徳のひとつだ。
勝ち気な私が、易々と素直になれていると思えない......。
そんなことを考えて、路地裏で佇んでいると不意に声を掛けられる。
「何してんだ、みなみ?」
「え......。ユキト、何で?」
「何でもも何も、この路地を通らずして帰宅するなんて無理だろ?」
「あ、そっか......。ユキトの家の前だったんだ……」
「? どこだと思ってたんだ?」
「いや、特に……」
「ふーん……」
ユキトのことで頭を悩ませ、キャパオーバーになった結果です。
......なんて、言えるわけがない!!
しかし、無意識にユキトと出会う近道にいるとか。ユキトに声を掛けられるなんて! などと、思わぬところで発揮する幼なじみの不思議な引力に、改めてこっそり感動している私もいた。
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