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***
あの後。
ユキトのセリフに込められた言葉に、目が離せない人を見守る意味合いが強いことを知った衝撃はハンパなかった。
一瞬でも舞い上がってしまったが故に突き落とされたようなショックも走ったけど......。平然を装ってユキトと別れた。
妙なところで、ユキトは優しい。
きっと私が項垂れる原因を知れば、甘い言葉の一つや二つ。サラッと言ってのけるだろう。だからこそ、同情する余地を残す前に逃亡を選ぶ。
同情からの甘い言葉ほど、怖いものはない。
即座にしょっぱい言葉に変化してしまうのだから。
親友からの衝撃発言。
幼なじみからの驚愕発言。
どちらも大事で大切な人だから打撃だって人一倍。
そして、混乱も人一倍。
眠れぬ夜を過ごした翌朝。
教室へと続く廊下で見た光景に言葉が詰まってしまう。
「!?」
ユイに向けて、ユキトが笑って喋っている。
クラスメイト同士、何度も見た光景のはず......。
なのに、どうしてこんなに心が痛いんだろう。
「あ! みなみ、おはよー!」
「おー、おはよう。相変わらずギリギリだなあ、みなみは」
私に気付いたふたりの挨拶で無理やり笑顔を作り上げる。
そして、にこやかにふたりと同じノリで挨拶を返す。
「おはよ! 遅刻まで5分以上、余裕あるし! 全く問題なし!!」
「え? 何、言ってんだ? 後一分しかないぞ?」
「チチチ。関所は校門、つまり校門通過時間を守れてたら問題なし!」
「ははは、相変わらずだなあ。みなみは」
教室から見える掛け時計を見ながらツッコミを入れるユキトに全力でツッコミ返す。
いつも通りの馬鹿話。
それで全てが丸く収まったと思ったんだけど......。
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