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「それで、お前。いったい何に悩んでんだ?」
「え、え……!? 何、藪から棒に言ってくるかと思ったら」
「お! みなみもキチンと『藪から棒』て言葉、知ってんだな」
「いや、流石にそのくらいは......ねえ」
ことわざテスト、確かに壊滅的だったよ?
だけど、それ小学生の時の話だよ? 流石に頭に入ってるよ?
「て、それはどうでもよくて」
「……振ってきたの、ユキトだからね?」
ひとりツッコミを入れるユキトに向けて、ツッコミを更に重ねていく。ほんの少しだけ、話が逸れることを期待して......。
「で、どうなんだ?」
「どうと申されましても......」
話が元に戻ったことを残念に思いつつ、抵抗を試みる。
賢い幼なじみ相手に無駄だと悟っていても、理由が理由なだけに意地があった。
「今朝、あからさまに様子がおかしかっただろ?」
「え? そんなことないでしょ?」
「お前が無理に元気をあげる時なんだよなあ。無駄にテンション上げてる風な如何にもなセリフを使う時って」
「え、何それ!?」
「『チチチ』、とかね。気付いてないでしょ?」
「っ!!」
あー、もう!!
これだから賢い幼なじみは嫌だ!!!!
無駄に間違い探しが得意だから厄介だ。
違いを把握しているから強敵だ。
「で、何があったんだ?」
「............」
そう言われても......。
ユイがユキトを好きだとか。
私もユキトが好きだとか。
ユイにユキトが好きだと伝えられていないだとか。
全てユキトがキーパーソンになっている以上、何も言えない。
唯一、言える事実といえば二つ目。
私もユキトが好きという、ユイが関係していない項目。だけど......。
ユイの恋心を聞いた以上、今ユキトに伝える行為なんて、ただの抜け駆けにしか見えないだろう。
ならば、もう一か八かの勝負に出るしかない!
「ちょっとね、ユイに。嫉妬して、自己嫌悪に陥ってたの」
嘘じゃない。
嘘じゃないけど......。
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