* シャドー・スイッチ *

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*** 「それで、お前。いったい何に悩んでんだ?」 「え、え……!? 何、藪から棒に言ってくるかと思ったら」 「お! みなみもキチンと『藪から棒』て言葉、知ってんだな」 「いや、流石にそのくらいは......ねえ」 ことわざテスト、確かに壊滅的だったよ? だけど、それ小学生の時の話だよ? 流石に頭に入ってるよ? 「て、それはどうでもよくて」 「……振ってきたの、ユキトだからね?」  ひとりツッコミを入れるユキトに向けて、ツッコミを更に重ねていく。ほんの少しだけ、話が逸れることを期待して......。 「で、どうなんだ?」 「どうと申されましても......」  話が元に戻ったことを残念に思いつつ、抵抗を試みる。  賢い幼なじみ相手に無駄だと悟っていても、理由が理由なだけに意地があった。 「今朝、あからさまに様子がおかしかっただろ?」 「え? そんなことないでしょ?」 「お前が無理に元気をあげる時なんだよなあ。無駄にテンション上げてる風な如何にもなセリフを使う時って」 「え、何それ!?」 「『チチチ』、とかね。気付いてないでしょ?」 「っ!!」  あー、もう!!  これだから賢い幼なじみは嫌だ!!!!  無駄に間違い探しが得意だから厄介だ。  違いを把握しているから強敵だ。 「で、何があったんだ?」 「............」  そう言われても......。  ユイがユキトを好きだとか。  私もユキトが好きだとか。  ユイにユキトが好きだと伝えられていないだとか。  全てユキトがキーパーソンになっている以上、何も言えない。  唯一、言える事実といえば二つ目。  私もユキトが好きという、ユイが関係していない項目。だけど......。  ユイの恋心を聞いた以上、今ユキトに伝える行為なんて、ただの抜け駆けにしか見えないだろう。  ならば、もう一か八かの勝負に出るしかない! 「ちょっとね、ユイに。嫉妬して、自己嫌悪に陥ってたの」  嘘じゃない。  嘘じゃないけど......。
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